箏は奈良時代に中国から入ってきた楽器で、雅楽の楽器の一種だった。箏の各部
には「竜」の字がつけられているが、箏の形を似ている「竜」になぞらえている
からだが、形だけでなく、高貴なものの例えに使われるように、身分の高い人が
弾き、精神性の高い楽器だったとされる。伝来した当時は管弦という合奏形式の
中の一つの楽器だったが、平安時代には箏で伴奏する歌曲も現れたが、現在の箏
曲の原形は、江戸時代に筑紫流箏曲を学び、改革した八橋検校の力によるもので
ある。
箏は桐の木で作られ、13本の絃が平行に張られている。可動式の駒を立てて音
の高さを調整する。右手の親指、人差し指、中指に爪をはめ、絃をつま弾いて音
を出す。現在では山田流、生田流の二派に分かれており、流派により構える姿勢、
爪などに違いがある。

〈十七絃箏〉
「春の海」を初め革命的作品を数多く発表した宮城道雄が、1921年従来日本楽器
に不足していた低音を補うために伴奏楽器として考案したもので、箏と同じつく
りであるが、ボディが大きく、糸も太い。アンサンブルの1パ−トとして用いて
いたが、その後の作曲家達によって独奏曲、コンチェルトが作曲され、発展して
いる。道雄はこの他にも大胡弓、八十絃、短琴なども工夫して作り、新楽器考案
のさきがけであった。

その後、十三絃箏の可能性を追求した野坂恵子考案の二十絃箏・二十五絃箏、宮
下秀冽考案の三十絃箏という箏も登場している。

「琴」と「箏」は混同されがちだが、もともと違う楽器である。箏は柱(じ)を
持っており、その位置で音の高さを決めるが、琴には柱はなく、左手の指で絃を
押さえて音の高さを決める。琴の代表的なものは中国の七絃琴で、日本には一絃
琴と二絃琴があり、少数の人々のみが演奏しているがほとんど絶えてしまってい
る。琴の字は「きん」と読み、箏は「こと」と読む。 (内藤美和記)